アメリカ軍B29山の手無差別大空襲から六十一年

  中野区宗教者懇話会が慰霊祭を執り行う

 

 東京・山の手大空襲をはじめ、災害や交通事故などで亡くなった人たちの冥福を祈り、いのちの尊さを地域社会に訴える第7回「いのちの尊さを祈る日」の慰霊祭が521日午後、新井薬師梅照院で営まれた。中野区内の宗教者により宗教の違いを超えて結成された「明るい社会づくり中野区宗教者懇話会」(根本智英会長・真言宗梅照院住職)が平成12年以来、山の手大空襲のあった5月に毎年行っている。

 先の大戦で東京は百回にも及ぶ空襲を受けた。なかでも渋谷・新宿・中野の山の手地区は、昭和25525日から未明にかけての大空襲で大規模な被害を被り、多くのいのちが奪われた。

 その記憶が時代とともに風化しつつある一方で、世界各地には今なお戦争や紛争があり、足元を見ても、災害や交通事故などの不慮の事故、残酷な暴力などにより尊いいのちが奪われ、傷つけられている。

 こうした現実に対し同会は「今日の繁栄の陰に亡くなられた方々のご冥福をお祈りする」とともに「いのちの尊さを受け止め、いのちの傷みに耳を傾けて『悲しみや恨みを残すような行為を二度と起こしてはならない』との決意を地域社会にアピールすることは私たちの使命である」との思いから慰霊祭を継続している。同会は、神道、仏教、キリスト教、天理教、金光教、解脱会、立正佼成会の宗教者で構成。慰霊祭は、第1回は仏式、第2回は神式、第3回はキリスト教式、第4回は立正佼成会の儀式、第5回は金光教の儀式、第7回は解脱会の儀式、今年は中野仏教会長の小林貢人師(成願寺住職)が導師をつとめ仏式により営まれた。

 安藤文隆事務局長(真言宗東福寺住職)が司会をつとめ、解脱会中野支部の稲子暢二氏が「戦争で亡くなられた御霊に対し二度と戦いを起こさないことを誓うのが私たちの使命」と挨拶。読経の後、金光教中野教会合唱団と立正佼成会中野教会中野コーラスの歌声が流れるなかを参列者全員が献花した。

 根本会長は「心からこみ上げるものを感じながら読経した。住職30年、あのアメリカ軍の空襲はじめ戦災で亡くなった方々のために塔婆を書くのに息苦しさがあったが、ここ23年はそれが無くなった。みな清らかに天上界へ往生されたんだと思う」と挨拶した。

 第二部は安田恵一事務局員が司会をつとめ、大藪正哉師が講演。最後に北條賢三顧問(真言宗東光寺住職)が「目をつぶると61年前のB29大空襲が思い出される。いのちがどんなに尊いかを心ある者同士で語り合ってきた。あらゆるいのちは生かされたいのち。心と心を通わせながら、互いに悔いのないよう生きて、また来年会いましょう」と閉会の言葉を述べた。

(「中外日報」527日号から一部変更して転載)。